七七日横丁

この世とあの世とその世

ゼウス、トラトラトラ(オオカミ):寿司の帰郷(ネタバレあり)

nanananoyokotyo.hatenablog.com

「幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました」

「……」

 「幾時代かがありまして 冬は疾風吹きました」

「……」

「幾時代かがありまして……」

「待って!!これ何の時間なの!?」

「何って……詩を朗読していただけだが?」

「詩を!?何で?」

「お母さん、しまあじさんの趣味は詩の朗読なんだよ」

「ダークハンターなのに!?」

良いだろ詩が好きなダークハンターがいたって!!ダークハンターが全員えっちなサディストだと思うなよ!」

「た、確かに……偏見が過ぎていたね、ごめんなさい」

「謝ることじゃないよ。全部こいつの趣味が変なのが、悪いから」

「それで、さっきの詩は何なの?」

「俺もよく知らないんだけど、チューヤって人の詩らしいぞ。俺この人の詩好きなんだよな〜」

「……それで、今は何の時間なんですか?」

「ああ、今は」

「これからボスと戦うとこだぜ!」

「すっげぇ急だな!?」

「四階と五階、丸々端折ったんだね……」

「あの後面白いことが起こったかと言われると、そんなことも無く。だから丸々端折ってくれってびんちょう達が」

「クソ長い道って以上特に特徴ないからね、エトリアの一層は」

「今回戦うのはスノードリフトって狼だね」

「ああ、姉から話は多少。この後普通にエンカウントするモンスターの色替だよね?しかも虎の」

「まさかシリーズ最初のボスが雑魚敵の色替えとはな……」

「今回はお二人だけで挑まれるんですか?」

「エトリアを冒険するの、メタ的には三回目だからな。普通に倒しちゃ面白くは無いんでね」

「二人のスキルはどんな感じになってるの?」

「お、同業者特有の質問だな。これを見ろ!」

「「うーんこれは見事なまでのトラッピング」」

「他のスキルに目もくれずトラッピングを上げるとは!さっすがしまあじさん!」

「はっはっは!チリはよくわかってるな〜!」

「そこ意気投合しないで、収拾つかなくなるから」

「きびなごくんのスキルはどんな?」

「それが……まだ振って無いんです」

「ということは、ある程度様子を見ながらスキルポイントを調整していくつもりなんだね」

「トラッピングって絶対第一層で使うスキルじゃないと思うので、こっちもどうサポートしたら良いのかわからず……」

「完全なる尻拭い」

「いつものことです」

「きびなごは案外心配症だからな。こいつ、寝てる時にいつも『死んでません』ってメモ枕元に置いていつも寝てるんだぜ?」

「願掛けみたいなもんだよ」

「でも自分の頭は撃ちぬくんでしょ?」

「まあね」

(マジで情緒がわからない)

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「さて、それじゃあ早速挑むとしますか」

「待て、その前に回復だ」

「まずはスノードリフトを誘導して、他のFOEから引き離す、と」

「ニ歩前に来ると急に追いかけてくるんだよな。寿司連盟と寿司連盟の前身はこれで二回衝突事故を起こしているぜ!」

「スキル構成は結局どうしたんだ?」

「ひとまず『猛き戦いの舞曲』と『聖なる守護の舞曲』に極振り。子守唄系に振れれば一番良かったんだけど、流石にこのスキルポイントで習得するのはよくないかなって」

「既に強いスキルを知ってると一気に取得したくなるよな~。でもそうすると逆に中途半端になるのが悩みどころだよ」

「今の自分の状況客観視できてんじゃねぇか」

「よし、それじゃあ早速挑むぜ」

「リスクにリターンが見合っていないぞ」

「で、出直すぜ!!」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「えーまずですが、スノードリフトの攻撃力が思った以上にあった」

「ダークハンターもバードも脆い職業だからね……。で、どうするの、このままトラッピング戦法で行くの?」

「お前は、俺がトラッピングを諦めると思っているのか?」

「ソーデシタネ」

「本当に苦労してるね」

「慣れっこです」

「でもどうするつもりなの?使うTP、被ダメージに対して流石にこれは……」

「ふっふっふ……これを見ろ!!」

「そうか!トラッピングは左右の味方よりも、自分の被ダメージで反撃した方が強いんだ!」

「そう!つまり俺が前衛に立って、きびなごに後ろからメディカを投げまくってもらう!方法はこれしかないんだぜ!」

「ドレインバイト使え~~~!!!」

「というわけで、メディカⅡを爆買いだぜ!!」

「うわあ……経理担当(しめさば)に怒られそう」

「でも安全第一っていつもびんちょう達も言ってるぜ!」

「姉は無駄遣いの言い訳として言っているわけじゃないかと……」

「……」

「よし、次!!きびなご、俺にメディカⅡを投げ続けてくれ!!」

「都合の悪いことを聞かなかったことにするな」

「うわぁ……一層とは思えないほどの攻撃力」

「10ポイント振ってるからな。それよりきびなごは何でそんなに難しい顔してるんだ?」

「『聖なる守護の舞曲』、一応10ポイント振ってるんだけど……の割には被ダメージ減ってないなって……」

「あーそうだな。でもトラッピングがあるかだ無問題だぜ!」

「理屈がわからんぞ大馬鹿野郎」

「とか言ってるうちに倒しました」

「単発攻撃だけだから、最悪メディカさえ投げ続けていれば大丈夫ってわけか……ドレインバイトじゃダメなんですか」

「ダメだ」

「でも思った以上にあっさり勝てちゃったな。……メディカ、大分余っちゃった」

「まあまあ、勝てたから無問題ってことだ。早速次の階に行ってミッションを報告しようぜ!」

「はまち、シールドスマイト」

「ハマ」

「ぎゃあああああああ!!!!」

「金の無駄遣いが過ぎる。しまあじ、やりなおせ」

「で、でも……」

「ハマ」

「おごっ!」(戦闘不能

「それを言いに来るためだけに二人で5階まで……?」

「そりゃそうだよ。僕たちは今後も冒険を続けるんだから、お金の無駄遣いは絶対にダメ!」

「合法的にしまあじを処せて嬉しそうだね」

「姉さんに仇を為す者は全員殺します」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「というわけで、メディカの購入量を抑えてテイク3だぜ!!……きびなごは、何をやってるんだ?」

「うん。やっぱりどうしても軽減率に違和感があったから、攻略を確認してみたんだ。そしたら『聖なる守護の舞曲』、地雷スキルみたいでね……」

「それで警戒歩行か」

「そう、舞曲に費やしていたスキルポイントをこっちにね。最初以外端折ってるけど、ここに来るまでの道中、毎度毎度危うい目に遭っているので……」

「きびなご、俺のことを捨てないでくれ」

「ただの友達だったらとっくに捨ててただろうね」

「ちょっと待て」

「あースキルポイント振り直したから、スキルの発動速度もずれてるな」

「……となると、まずいぞこれ」

「乱数が固定化された!」

「ど、どうする?」

「どうするもこうするも、『猛き戦いの舞曲』は後回しだね。僕は最初のターン、君にメディカⅡを投げつけることにするよ」

「俺を捨てないでくれ」

「君、テラーなんて使えたんだね」

「あばばだぜ」

「など色々ありましたが、テラーで行動がスキップされることも無かったため、無事撃破です」

「うーん、トラッピング最高!」

「絶対ドレインバイトの方がいいんだよな。かんぱちとにしん、早く戻ってきてくれ……」

「そして二層だぜ!」

「相変わらず、蒸し暑い場所だね……。幾重ものギルドが二層で喧嘩別れするって聞いたけど、絶対この蒸し暑さのせいだと思う」

「乙~」

「あ、パイセン達、お疲れ様っす!!」

「二人だけで倒すなんてね」

「本当によくやったな。これで二人組冒険者の後継者問題も解決できるな」

「あ、いや。あとでもう二人ほど合流する予定なので」

「その枠は他の枠に渡すんだぜ!」

「まあ良い、これはちょっとしたレンたんジョークだ。ところで今回の冒険はお前たちがボス戦を担当していく、ということで良いのか?」

「そうだぜ!何度も言うけどあと二人来る予定だけどな!」

「成程な……それじゃあ、楽しみにしているよ」

「……そうっすね」

「それじゃあ、私たちはこれで」

「色ヤバ」

「磁軸ワープ、外から見たらこうなってたんだな」

「ま、俺たちも戻るとしますかね!」

「そうだね。今日はびんちょうが唐揚げ一杯用意してくれるってさ」

「おお~!あとでにしんに自慢できるな!よし、戻ろうぜ!!」

「はいはい。……あっ」

「「リマスター一周年おめでと~!!」」

「きゅ、急~~~~!!!あと何で一人脱獄してんの!?」

「残りのリマスターも頼むぞ、アトラス!!」

 

おめでと~!(続く)