「相手は強敵だから入念な準備が必要とのことで、まいわし達が言っていた、例のところに来ました。鞭よりは剣派なんだけど、今回はトラッピングが両方で使えるからなあ……やっぱりトラッピング芸人としてはトラッピングが決め手になるということで、そうなると鞭も今後使っていきたくなるわけで」
(最近しまあじの言動がどんどんおかしくなっているような気がする。具体的に言うとびんちょうにどんどん性格が似てきている気がする……怖いな)
「ここは自分にお任せください!!」
「どうでありますか!!まだまだ精進の身ではありますが……ってきゃーーーー!!」
「あら、袴が舞い上がりましたわ」
「しまえ」
「ちなみにカースメーカーは裸族が定石のようですが、ボクはめちゃめちゃ下に履いてますし着ています」
「そこはまともなんだね、君」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「4階にもありました、例の仕掛け付き小道」
「観光地にありそうな名前ですね」
「ふぅ……盾ってこういう時の為にあったのか」
「そう、盾は守るためにあるもの。シールドスマイトをやりたい気持ちはわかるが、まず先に防御スキルの取得を頼むぞ」
「はーい」
「クソデカクモの巣はびんちょうがなんとかしてくれました」
「こういう時真っ先に突入しがちなびんちょうだけど、意外と一通り案が出るまで待っててくれるんだよね……浮かない顔だけど、どうしたの?」
「結局力技になっちゃったなあって。もっとこう謎解き!!みたいなのしたかったなーって」
「でもその力技が出来るのがソードマンの良いところだ。気にするな」
「謎解き……だから、この間読んだ古代文字、教えて欲しいって言ってきたんだ」
「そういうこと!!」
「向上心が凄いねえ。あとの抜け道は私達じゃどうしようもできないし、一度帰りましょう」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「今回なんだけど、二回に分けて出撃します」
「二回に? ゲームシステム的にできるんですか?」
「4階にいた青FOEいるでしょ?あれがキマイラの周りに沢山いたから、多分乱入されるタイプかな、と」
「ああ、そういう意味での二回に分ける、ですのね。わかりましたわ」
「でも低い段差の向こうにいるんでしょ? FOEには乗り越えられるけど、ボク達ボウケンシャーには厳しいんじゃないかな?」
「ふっふっふ……そこについては策があるんだ。ところでみんなは3階で使った鈴覚えてるか?」
「ああ、あれね」
「……あっ」
「お、やっぱりきびなごはわかったか。言ってみろ」
「僕の『招引のソナタ』を使って、FOEをおびき寄せて、先に始末しておくってこと?」
「そういうこと!! で、今回のキマイラ戦のメンバーだけどダークハンターのしまあじ、パラディンのはまち、ガンナーのヒラメ、ドクトルマグスのおばあちゃんで行って貰おうと思います」
「じ、自分でありますか!?」
「俺が戦っていいのか!!ヤッターでも一応選定理由を聞かせて貰っていいか?」
「ぶっちゃけガンナーとドクトルマグスは新職業を使いたいのが理由っすね。ただ、ドクトルマグスは『専門職には劣るけど基本なんでもできる』ので、こういった人数に制限をかけたプレイの場合は結構使えるかもと思って」
「おお、お主なかなか分かっているようじゃのう!!」
「ガンナーも高火力だからな。単体技が多いが、それは逆に単体で出てくる今回のような強敵相手にはむしろ都合が良いわけだ。敵は氷が弱点みたいだから、アイスショット、頼むぞ!!」
「つまり自分が攻撃の要ということですね!!頑張るであります!!」
「パラディンは防御の要ということで選出、ダークハンターは今回は縛りですね!!本当はキマイラを状態異常にしてドクトルマグスの巫剣で倒す案もあったんだけど、視察した感じ状態異常が全く入らなかったので、今回はガンガン封じをお願いします」
「お、了解!!それじゃあきびなご、他のFOE処理頼んだぞ!!」
「うん!!しまあじが名一杯戦えるように頑張るからね!!」
「ってこれ、画像違くない?? どう見ても『全てへの子守唄』では?」
「スクショの取り忘れで視察の時の画像しか無かったの。許してちょんまげ」
「他のFOEは全く強く無かったね。首切り目当てとは言え、かんぱちが居合の構えを強化しててくれて良かったわ」
「おほほほほほ!!」
「とりあえず、準備も出来たことだし、ボクたちは退散しよっか」
「こちらもすくりーんしょっとを撮る余裕が無く、すまないな。役割としては、妾が回復とメイン火力ヒラメの強化を行ったぞ」
「俺は封じだな。キマイラは封じが通りやすい印象があったし、スキル持っているかどうかで大分印象変わるかもな」
「僕は基本ガードだね。でもこれが難しくて。相手に封じが入っている場合はどの攻撃が危ないのか分かるけど、そうじゃない場合物理に備えるか炎攻撃に備えるか、判断が難しかったかな」
「別部位の封じを入れるのは、前箇所の封じが取れてからで良かったかもしれないな」
「自分はアイスショットを撃ち、TPが切れた後は、自分が武器にフリーズオイルを塗って、それをメイン火力としました」
「最後俺が死に続ける事故が発生したけど、このままいけば……」
「勝った!!」(あとネクタル間に合った!!)
「……」
「……」
「二人して浮かない顔、でありますか?」
「いや、相手のどの攻撃が飛んできても良いように、もう少し対策できたんじゃないかなって」
「あ~……勝てたっちゃ勝てたけど、最後のしまあじ悲惨だったもんね」
「今回はピクニックモードもあって、休養のハードルも下がってるんだし、ボスの為だけに、ファイアガードのスキルレベルを上げていても良かったかも」
「……」
「僕じゃなくてきびなごさんを連れて来ても良かったかもね。必要スキルポイントは多いけど、歌スキルは永続だし……」
「……お前はそれで良いのでありますか?」
「へ?」
「自分であれば、これだけの強敵、勝てただけでも満足します。それに強敵との戦いと言う大一番、他の人に譲って良いのでありますか?」
「……ああ、そういうことか。何も、別に強敵と戦って勝つことだけが、僕たちの目的じゃないんだよ」
「いかに自分が満足する戦い方で勝てるか。わたくしたちのギルドは『何を得たか』だけじゃなく、その過程が大事なんですの」
「それに、さっき強敵と戦うことをキミは大一番って言っていたけど、そうでもないんだよ? 未知の迷宮で地図を書いたり、進めない進路の開拓をしたり、それらすべてひっくるめて冒険なんだから」
「花形なんてない、強いて言うなら全部花形。それが冒険ってものだよ」
「全部が花形……」
「そーゆーこと!!と言う訳で、ヒラメ君には僕から贈り物、ほい、今朝採ったニンジン!!」
「いらねーであります!! やっぱこいつ何考えてるのか分からないであります!!」
「うふふ、すっかり仲良しね」
「そうかなあ、一方的にはまちが奇行をしているようにしか思えないけど。で、びんちょうどうする? リセットする?」
「ああ、その件ならすまない、既にセーブは済ませたぞ」
「ええ、嘘!?」
「今回は全員立って勝つことができた。拘るのも大事だが、あまりにそこばかりに重点を置いていると、一生天空の城には辿り着けないし、なによりも23階……前世で二度目に倒せなかったアイツの元には辿り着けない」
「確かにそうだけど……」
「まあ次からは自由にやるがよい。ただ今回はなるべく早く事を済ませる必要があったのを、忘れてはおるまいな?」
「……あっ!!」