「えーっと……巣鴨様がどうしてここに?」
「……はまち、連絡したじゃん……」
「殿下!!大変ご無礼を!!はまち!!お前殿下からの手紙はちゃんと全部読んでいるんだろうな!!!」
「えーっと……やっべ。最近読んでねぇわ……」
「ボケカス!!!!!」
「そんなことだろうと思ったよ……」
「すみません、遅いかもしれませんけど今読みますね……えーっと」
はまちへ
ハイ・ラガードはこちらよりも北にあると言いますが、風邪等ひいていませんか?
今回、相談があって手紙を書くことにしました。暫くの間そちらのギルドで僕の身柄を預かって欲しいのです。
理由は二つあります。一つ目は色々ときな臭いことがあるからです。
僕を国王へ、と主張する一部勢力が再び力を増してきているのです。その中心人物は例の目黒将軍です。
僕は女王陛下から国を乗っ取ろうなんて少しも思っていませんし、自分は国家元首としての器も無いと思っています。そこで暫く国を離れほとぼりが冷めるを待とうと思っています。
そしてもう一つ、これは私的なことですが、僕もいずれ世界中にある世界樹の迷宮へ挑んでみたいと考えています。しかし僕は今まで冒険をしてこなかったものですから、そちらで皆さんの冒険を見学させていただきたいと思っています。
はまちにはギルドの皆さんに相談をしておいて欲しいと思っています。無理を言ってごめんね。
それでは。身体に気を付けてね。
「……」
「……はまち、ちょっとこっちにおいで」
「……」スタスタ
「オラァ!!!大爆炎の術式じゃぁ!!!!!」
「ぎゃー!!盾が無いからファイアガード出来ないよぉ!!」
「ま、まあまあ。どうせこんなことだろうと思ってたので」
「苦労しているんですね、殿下」
「日比谷さんと言い、巣鴨さんと言い、はまちに対する信用が無さ過ぎる」
「適当でだらしが無くて、困ったものだ……。ただ裏も表も無いから、陰謀まみれの王宮にいると、なんか嫌いになれないんだよな……」
「実の家族全員死んだと思ってる状態かつ陰謀まみれの王宮で、今の今まで過ごしてこのキャラ保ってられるの凄くない??」
「それにしてもこの目黒とかいう奴めっちゃ最悪っすね!!野心家じゃん!!」
「介錯しながら目が血走ってそうで怖いであります!!」
「でもこの人から休日に美味しいジンジャークッキーを焼いている気配がする!!根は悪くない人な気がする!!」
(あ、この人よく見たらわたくしが以前勤めていた傭兵隊のオーナーですわ)
「皆さん目黒将軍がそこまで気になるんですか……?」
「若ショ、イケメンじゃしのう。好みでは無いがな」
「ワンッ!!」
「びんちょう、この人どうするの? ギルドの名簿にはまだ余裕があるけど……」
「冒険が好きな人は大歓迎!!それにあたしは巣鴨様からはまち取っちゃったからね~。何も言えないよ。ただハイ・ラガードではプリンスを登録できないので……」
「しばらくこんな感じでお願いします」
「え、あ、女性パラディンの見た目で……メディック!?」
「適当です」
「『新世界樹の迷宮2』なら、巣鴨さんもプリンスのままでハイ・ラガードを冒険できるみたいなんだけど、生憎持ってなくて……」
「じゃあ何処かでロムを探してくれば僕もみなさんと!!」
「バフ職、二種類もいる?」
「ごめんなさいごめんなさいなんでもないです僕は今回見学させていただきますごめんなさいごめんなさい」
(きびなご、最近性格の悪さをどんどん隠さなくなってきているな)
「ま、結局この後新世界樹2がアマゾンで1000円以下で売ってたから買うんじゃけどな。ハイランダーDLCは惜しかったがのう」
「そ、そうなんだ……」
「ちっ……」
「勿論タダで置いておいて欲しいと思っている訳じゃ無いので、迷宮内に入らなくても出来る仕事があったら遠慮せず教えてくださいね」
「それなら一つ頼みたいことがあるんだけど!!」
「是非!!なんでも言ってください!!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「というわけで宿屋係、よろしく!!」
「……アッハイ」